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[No.0447] 2005/12/21
No.0446「連載「エサ箱日誌」第85回」へNo.0448「連載「エサ箱日誌」第86回」へ

モリサワジュンのコラム「Gamers, Be Ambitious」は引っ越しました。
http://d.hatena.ne.jp/morisawajun/
POP-SITEゲーム批評
いっそ「まんが道」をゲーム化希望。
不毛と哀愁の『まんが家デビュー物語DS』



■TDKコア■DS■2005年11月10日発売■育成アドベンチャーゲーム■5,040円(税込)■1〜2人用■★★★

まず最初に断っておきたいのだが、このゲームははっきり言って面白くない。テレビゲームとしてのポテンシャルを考えた場合、前回ここで書いた『マリオカートDS』を100とすると、この『まんが家デビュー物語DS』は3ぐらい。「面白くて当然」「面白いだけでは売れない」という非常に厳しい昨今のゲーム業界にあって、ここまでつまらないゲームが、しかも開発者の興味やモチベーションを刺激して止まない(と私は思う)新興のゲーム機であるニンテンドーDSでリリースされるというのは、逆に驚きですらある。意図的につまらなくしているのではないかと勘ぐりたくなるほどつまらない。

前作『まんが家デビュー物語』も以前ここで紹介させて頂いたが、続編にあたる本作品はあまり前作から進歩していないように見える。このシリーズを一言で言えば「ミニゲームでスキルを上げながら漫画家を目指すゲーム」なのだが、まずこのミニゲーム群がどれもこれもあまり出来が良くないし、そもそも「なぜミニゲームをクリアすると漫画家としてのスキルがアップするのかがわからない」という根本的な問題があり、本作品はこの問題を一切無視している。おそらく問題とも思っていないんだろうけど。

この「ミニゲーム」と「スキルアップ」は、例えば以下のような具合である。

・16分割されたパネルそれぞれに表示された記号を暗記。一定時間でパネルはすべて裏になるので、パネルの記号を当てていく。全部当てると「がりょく」と「かんさつ」のパラメータが上がる。

・山積みになった本がグラグラ揺れて倒れそうになっている。これを手で押さえて静止すると、「ストーリー」と「テクニック」のパラメータが上がる。

・DSの上画面に表示された絵(たとえば「しろながすくじら」「がそりんすたんど」など)の名前を考えて、下画面の文字パズルで完成させると、「ストーリー」と「ひょうげん」のパラメータが上がる。

・バスケットボールのフリースロー(上下するパワーゲージに合わせてボタン1回押し)をクリアすると、「ひょうげん」と「しきさい」のパラメータが上がる。

これらの、どう考えても漫画とは何の関係もないミニゲーム群が本作品のつまらなさの核、いわば「つまらなさエンジン」である。「いわば」って。一部、多少は美術的な素養を必要とする感じのするミニゲームもないわけではないが、ほとんどは単なる「面白くないパズル」とか「地味なスロットマシン」とかそんな感じ。これらのミニゲームが漫画のスキルアップにつながるはずがないし、このゲームで遊ぶと漫画が上手くなったりする事も多分なさそうである。

他にも、意味の薄い町内マップ、不自然な画面切り替え、セーブ完了メッセージが出ない、タッチパネル操作とキー操作の不調和などなど、「枚挙にいとまがない」という言葉がこれほど適切に当てはまる事は滅多にないと思えるほど沢山の難点が本作品には存在する。グラフィックだけはなかなか丁寧に描き込まれており、出てくるキャラクターも可愛く描けていて好感が持てるのであるが、やはり焼け石に水、グラフィッカー孤軍奮闘という印象であった。

私は最近ある大手アニメ制作会社の方が「近ごろは子供向けに子供っぽいものを作っても売れない」とおっしゃっていたのを聞いたが、この『まんが家デビュー物語DS』を含むTDKコアの職業体験シリーズ(漫画家だけでなく、獣医やナースなどを扱った作品も存在する)が命脈を保っているのを見ると、まだまだ「子供っぽく作られたもの」に引っかかる子供は実在するんだなあと逆に感心する。例えば「小学三年生」の12月号の見出しを見ると「9大ゲームを大しょうかい」というコーナーがあり、「9大ゲーム」に本作が入っているのである。パブリシティなのかタイアップなのかはわからないけれども、こういう記事を読んで本作品を購入してそれなりに満足するような子が、きっと一定数存在するんだろう。本当に漫画家になるきっかけになったらいいなとしみじみ思うけど、この作品の内容では厳しいかも知れない。

ただ、別に私はこの『まんが家デビュー物語DS』のつまらなさをあげつらって断罪したりするつもりは毛頭ない。むしろ、私はこのTDKコアという会社のゲームに共通するユルい雰囲気が好きである。私は、「面白さ」はテレビゲームというものを構成する数ある要素の一つに過ぎないと思うので(最も重要な要素ではあるけど)、つまらないからダメだとは思わない。全体的にBASIC(VBとかじゃなくて1980年代のMS-BASIC)で作られているような懐かしい感じも好みだ。好意的に解釈すれば、漫画で言うところの「ヘタウマ」的である。まあ、例えば『マリオカートDS』のような「突出した面白さ」と相対化できるとはさすがに思わないけど。

唯一、非常にもったいないと思うのは、TDKコアがこの「漫画家育成ゲーム」という類を見ないユニークな題材を上手く生かせていないという点である。実に惜しい。日本の漫画は世界的に見てもトップクラスの質と量を誇るコンテンツであり、その日本漫画が生まれるまでの過程をうまくゲーム化することができれば、ゲーム的にも漫画的にも非常に意義深いものになり、漫画家を志す少年少女に対する漫画制作の啓蒙にもなると思うのである。

映画産業が盛んなアメリカでは、例えば『Sim Cinema Deluxe』という映画製作ゲームがすでに5年以上前に存在していた。限られた予算で監督や俳優や音楽監督や特撮スタジオを選び、映画の売り文句を考え、撮影して公開し、ボックスオフィスの成績を競うという内容で、シンプルながらも映画産業の仕組みがうまく表現されており、非常に面白いゲームだった。また、Lionhead Studiosの『The Movies』は更にディテールやグラフィックを進化させた映画会社経営ゲームとなっており、何とゲーム中にポリゴン俳優とセットを使って映画を撮影することさえ出来る。

私は漫画のことはあまり詳しくないけれども、編集者目線の漫画誌出版を漫画史に沿った形でゲーム化すれば非常に面白いのではないだろうか。基本的には漫画家を目指して上京して来た新人作家を指導育成し、読み切りを何度も描かせて手応えがあればアシスタントを付けて連載を持たせ、単行本が売れたら税金対策をさせて、の繰り返し……みたいな類型的な要素しか私には思いつかないが、夏目房之介先生や伊藤剛先生や竹熊健太郎先生のような識者、あるいは島本和彦先生のようなメタな漫画を手がけている方に監修して頂いて『The Movies』並みの考証とディテールが実現できれば、とても面白くて意義のある作品になるのではなかろうか。私はそんなゲームでぜひ遊んでみたい。

このゲームには歴史IF的な要素もあり、ゲームの進め方によってはなぜか手塚先生が漫画を諦めて医者になってしまったり、「無用ノ介」がコケて劇画ブームが不発に終わったり、みなもと太郎先生の作品が社会的な大ブームになったり、「こち亀」が10週で打ち切りになったり、「ガラスの仮面」が早めに完結したり、「漫画を読むと賢くなる」という説が流れてPTAが漫画の購読を推奨したり、力石でなくマンモス西が死んで葬式が中止になったり、鳥山明先生が少年チャンピオンに移籍して800万部/週を達成したりする。うわーたまらんな。って一人で勝手に盛り上がってるわけですが。

ただ、ニンテンドーDSではそこまでやるのは無理だろうし、そもそも子供のユーザーが付いてこないので、やはり編集者ではなく漫画家志望者の目線でゲームを作らなければいけないかもしれない。そこで、例えば藤子不二雄A先生の「まんが道」をゲーム化してみてはどうだろうか。もちろんプレイヤーは満賀道夫だ。神様・手塚治虫の「ジャングル大帝」の最終回の仕上げを手伝う満賀。DSの上画面は執筆中の手塚先生の背中、下画面では満賀道夫目線で手塚先生の原稿にGペン(=タッチペン)で仕上げの線を入れる。もちろんBGMは原作通りチャイコフスキーの「悲愴」だ。最終回を目の当たりにした満賀の感涙でぼやける下画面。うわーたまらん。ってやっぱり盛り上がってるの私だけですか。すみません。

(モリサワジュン)


TDKコア『まんが家デビュー物語DS 〜あこがれ!まんが家育成ゲーム〜』製品情報

http://www.nintendo.co.jp/ds/software/amnj/



(C)TDKコア 2005




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