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[No.0451] 2006/1/18
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POP-SITEゲーム批評
日本とアメリカの『ワンダと巨像』
攻略本を読み比べてみた



■ワンダと巨像 公式攻略&設定本 古えの地綺譚■エンターブレイン■2006年1月16日発売■1,680円(税込)
■Shadow of the Colossus Official Strategy Guide■BradyGAMES■2005年10月13日発売■1,838円(税込)

2005年はニンテンドーDSのゲームばかり遊んでいた。PS2のゲームも新作・中古を含めて色々買ったものの、あまり熱心に遊んだ記憶が無い。1回遊んでそれっきり……というゲームが何本もあった。「DSのゲームがPS2より面白かった」というよりも、DSやPSPといった高性能な携帯ゲーム機の登場により「テレビでゲームをプレイする」という行為が相対的にかなり面倒に感じられるようになったせいだと思う。情けない話だけど、あれほど楽しみにしていた2004年の『ドラクエ8』ですら、まだクリアしていないっす。グラフィックは多少落ちてもいいので、『ドラクエ9』はぜひDSで出て欲しい。私はPSPでもいいけどスクエニはよくないだろうな、きっと。まあ結局PS2あたりで落ち着くんだろうけど。

そんな我が家のお寒い2005年PS2事情であるが、唯一と言っていい例外が『ワンダと巨像』であった。広いマップに点在する16体の巨像を順に倒して行くというシンプルな内容ながら、ゲームを構成する各要素がどれもすごかった(大迫力かつ緻密に描かれた巨像、観光気分で散策できる作り込まれた広大なマップ、適度なボリュームの隠し要素、荘厳でカッコいい音楽、主人公ワンダと愛馬アグロの充実した操作感と華麗なモーションなどなど……)。物語が前面に出てこないのに、ものすごく原罪的でドラマチックな感じがするのも良かった。不条理な神話の主人公のような気分になれた。私が死ぬまでに忘れてしまうゲームはいくつもあるだろうが、この『ワンダと巨像』の事だけは忘れないだろうなあと思う。

そこで今回の本題である攻略本である。今のところ国内ではエンターブレイン刊「ワンダと巨像 公式攻略&設定本 古えの地綺譚」1冊が出ているのみだが、米国の出版社BradyGAMES Publishingによる攻略本「Shadow of the Colossus Official Strategy Guide」が日本のamazon経由で販売されていたので、両方とも購入して読み比べてみた。どちらもなかなかいい本だが、やはり日本側に軍配を上げざるを得ないかな、というのが率直なところだ。さすがに日本のゲームについて日本人が作った攻略本、という地の利はいかんともしがたい。ちなみに判型はどちらもA4変形で、BradyGAMES版の方が多少大きい。

まず「攻略本」の本分である攻略記事だが、どちらも充実しており甲乙付けがたい。巨像の倒し方やタイムアタックのコツ、隠しアイテム一覧、そして壁を登り続けて辿り着く例のアレなど詳細な項目が網羅されており、両者とも苦心の跡がうかがえる。ただ、BradyGAMES版にはゲーム中の重要アイテムであるトカゲと果物の地図が掲載されていないという致命的な弱点がある(巨像と見晴台の地図はある)。

全体的なエディトリアル・デザインは、エンターブレイン版の方が好きだ。モノトーンを基調に、空白を生かしたシンプルですっきりしたレイアウトで、写真も映えて見える。本文は中ゴシックBBBなどの地味なゴシック系の書体で、読みやすく客観的なタイポグラフィが施されている。ノンブルが、ワンダとアグロが走るパラパラマンガになっているというのもポイント高し。

対するBradyGAMES版は古文書をモチーフにしたみたいなデザインで、写真のフチがわざとギザギザになっていたり写真にいちいちシャドゥが付いていたりするし、背景にもいちいち写真が配置されており、はっきり言って過剰。ゴチャゴチャして見づらい。テキストにもHoefler TextやGaramondのようなセリフ系が使われている。好みにもよるんだろうがあまり良いデザインとは思えなかった。

それと、エンターブレイン版の方が圧倒的に印刷が美しい。BradyGAMES版は線数が低く、新聞の色刷りよりもちょっとキレイ、って程度に見える。あんまり写真が小さいと、一体何の写真なのか判別できないぐらいだ。印刷の事はよくわからないが、(同コストあたりの)印刷技術は日本の方が高い、ということなんだろうか。

逆に、BradyGAMES版の方が写真が隙間無く大量に載っており、記事によっては攻略の参考にしやすい。巨像までの道のりも連続写真で掲載されていたりする。巻末には大判な写真(このページに載っているような、印刷向けにレンダリングされた名場面集みたいな写真。プレス向けに配布されたもの?)が全面10ページほど掲載されており、これが非常に見応えがある。

開発資料はどちらにも掲載されているが、エンターブレイン版の方が圧倒的に充実している。設定資料や裏設定、絵コンテやスケッチ、ボツ巨像のスナップショットなど、非常に面白い資料や写真が満載である。

スタッフのインタビューはエンターブレイン版にしか掲載されていない。以前ファミ通に掲載されたインタビューに加筆したものだそうだが、ファミ通掲載版も未読だったので有り難く拝読した。画面のレンダリングや音響効果に関する事をもっと突っ込んで欲しかったが、なかなか面白い記事だった。私はゲーム開発の現場を全然知らないので、例えばアグロ(愛馬)の足があれ以上速くならない理由にはちょっと驚かされた。それと、プランナーの細野淳一氏に対する以下の問答にも(P.205)。

    聞き手:『ICO』で作ったもので、『ワンダと巨像』で活かしたというものはありますか。

    細野:いや、ないです。けっきょく、シームレスを実現するために全部作り直しました。

まとめると、エンターブレイン版は買って損なし。開発資料やスタッフのインタビューが豊富に掲載されており、本のデザインも良い。BradyGAMES版は無理して購入する必要は無いが買う価値はある。巨像攻略以外の部分に多数の写真を使用しているおかげで攻略に役立てやすい。大判の見栄えの良い写真も充実しており、見応えがある。何なら全ページこれでも良かったぐらいだ。それにしても最近の攻略本の充実っぷりはすごいね。どちらも攻略記事は丁寧かつ濃密で、エンディングまでちゃんと掲載されている。正直、ゲームを買わずにこれらの攻略本を買って読めばある程度は満足できてしまいそうな気さえする。

しかし、これほど強力なパワーを持った『ワンダと巨像』であるが、本作品を元にしたマーチャンダイジングが不思議なぐらい行われていない。せいぜい攻略本やサントラCDやTシャツが発売されている程度である。全16体の巨像フィギュアとまでは行かなくても、せめてワンダとアグロのフィギュア付きストラップぐらい発売されていてもおかしくないのにと思うんだが、需要ないんだろうか。それとも出せない理由でもあるのか。欲しいなあ、ワンダとアグロのフルアクションフィギュア(剣・弓矢・トカゲ付き)。

最後に、サントラCDについても言わせて頂きたい。『ワンダと巨像 大地の咆哮』は素晴らしい出来だった。オーケストラ演奏のいい曲が本当にたくさん収録されていて、単体の音楽作品としてもかなり高い水準にあると思う。iTunesで「巨像との戦い」だけのプレイリストを作って延々流していると、勇猛果敢な気分になって非常に仕事がはかどる。どうでもいい些末な仕事でも、何だかものすごい偉業をこなしているような心持ちがするのである。昨年までは、テレビを見ていると番組のBGMとしてジュノ・リアクターの曲ばかりがバカの一つ覚えみたいに聞こえてきてちょっと鬱陶しかったが(特に映画「マトリックス レボリューションズ」のサントラ曲)、今年に入ってから徐々にこの『ワンダと巨像 大地の咆哮』の曲が番組のBGMとして使われるようになってきた。年始の「スポーツマンNo.1決定戦」なんかは非常にマッチしてて良かったが、「たけしの本当は怖い家庭の医学」には笑った。体内に潜む病魔との闘い。「ミクロの決死圏」か。

(モリサワジュン)


ワンダと巨像 公式攻略&設定本 古えの地綺譚

エンターブレイン
価格:¥1,680 (税込)
Shadow of the Colossus Official Strategy Guide

BradyGames
価格:¥1,838 (税込)
OFF:¥721 (15%)
ワンダと巨像 大地の咆哮

キングレコード
価格:¥2,500 (税込)
ワンダと巨像

ソニー・コンピュータエンタテインメント/PlayStation2
価格:¥6,069 (税込)
OFF:¥1,071 (15%)

SCEJ『ワンダと巨像』製品情報

http://www.playstation.jp/scej/title/wander/

ファミ通書籍編集部

http://www.enterbrain.co.jp/kouryaku/







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