『ファイナルファンタジーIII』……1990年4月に発売されたファミコン用傑作RPG『ファイナルファンタジーIII』が、ニンテンドーDS用ソフトとして初のリメイク。オリジナル版の良さを引き継ぎつつも、グラフィックと音楽が大幅に強化され、物語やシステムにもアレンジが加わっている。携帯機ならではのセーブ・スリープ機能も完備され、遊びやすい内容に。
たかだか16年前の作品だというのに、「3作目は本当にすごかったらしい」「シリーズ最高傑作との声も高いらしい」「最後のダンジョンが悲しいぐらい長かったらしい」といった言い伝えしか知らない人も多いという、まさに伝説の超大物物件『ファイナルファンタジーIII』。今までどの機種にも移植されなかったこの作品が、遂にニンテンドーDS用ソフトとして2006年の日本に復活した。
このDS版、オリジナルの事を抜きにして考えても、RPGとしてはかなり良い出来である。もしかすると、『ファイナルファンタジー』も『ドラゴンクエスト』も去ってしまったニンテンドー64以降の任天堂ハードで遊べるオーソドックスな形式のRPGとしては、屈指の出来映えではなかろうか。
ファミコン版と比べると、とにかくグラフィックが良くなった。とはいえしょせんDSなんだけど、ドットの粗いテクスチャもかえって可愛いらしく感じられる。フィールドや戦闘シーンだけでなく、人々や街やダンジョンはほとんど3Dグラフィックで描き直された。街の建物がよく見ると書き割り(3Dグラフィックでなくポリゴン1枚)なのはご愛嬌。
操作性も実に軽快。懸案であったローディング時間もほとんど許容範囲である。ディスクのシーク音がないだけでも十分ありがたい。最近のRPGと違ってシステムもあまり複雑でないため、とても遊びやすい。DS版はジョブシステムが多少複雑になっているらしいが、まったく気にならなかった。
DS標準のスリープ機能(本体を閉じるとスリープ、開くと再開)以外にも、ダンジョンを含むどの場所でもセーブができるようになっているのが実に良い(再開するとセーブデータは消えるけど)。これにより、毎日本を読むように少しずつプレイすることができる。もちろんフィールド上ではどこでもセーブが可能である(この場合セーブデータは消えない)。
キャラクタの生い立ちやグラフィック、そして難易度設定など、ファミコン版とはだいぶ異なっている部分があるため、ファミコン版に多大な思い入れを持っている人には辛いかもしれないが、ファミコン版を途中で挫折して売り飛ばしてしまった程度の思い入れしかない私は、素直に楽しむことができた。難易度も低くなっており、ゲーム慣れしていない人でも問題なし。DSの定番ソフトにもなり得る、万人が遊べる秀作になっていると思う。個人的な不満は、ムービーはいらないからROMの容量と価格を下げて欲しかったという事と、Wi-Fiはいらなかったという事ぐらいである。
それより何より、『ファイナルファンタジーIII』のリメイク版が、PS2でも3でもPSPでもなく、あんまり高性能とは言えないDSで遊べるということに、私は最も意義を感じる。
プレイステーションに移籍した7作目以降、水を得た魚のごとく驚異の進化を遂げ、PS2でも飽き足らず今度はPS3で登場するという『ファイナルファンタジー』シリーズが、このDSという比較的貧相なハードの中に窮屈そうに収まっている感じが何ともいえないのである。帆船マニアがニヤニヤしながらボトルシップを眺めてるという感じ。狭いボトルに収まってるくせに、ちっちゃいけど細かいところまで精巧にできてるよな〜、みたいな。1/80スケールのデカくて大迫力の帆船模型も確かに捨て難いが、このボトルシップ感もまた良し、である。
あと、もし1990年代前半にスクウェアと任天堂が喧嘩別れしなければ、(DSとスペックが近い)ニンテンドウ64版『ファイナルファンタジーVII』ってこんな感じだったのかなあ、と思った。しかし、もし64で7作目が出ていたらその後の歴史が変わってしまったことだろう。『ドラクエVII』も64で出て、プレステは失敗してマイナーハードの座を獲得。大容量メディアの時代は到来せず、ゲームキューブはROMカートリッジを採用して大ヒット。当然、任天堂が携帯機に活路を見いだす必然性もない。従って、このDS版『ファイナルファンタジーIII』はおろか、ニンテンドーDSが存在していたかどうかもわからない。って、意味不明のたられば話ですみません。
(モリサワジュン)